医療法人弘仁会 板倉病院

船橋市の機能強化型在宅療養支援病院・救急告示病院
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熱中症の見極めと応急処置

内科救急診療部:古川 力丸

過去には、熱疲労や熱けいれん、熱射病など、さまざまな呼び名がつけられていましたが、現在ではこのような症状を引き起こす状態をまとめて「熱中症」として扱います。程度は様々ですが、頭痛、意識障害、けいれん、ショックなどの症状を引き起こします。熱い野外だけではなく室内でも起こりえますし、しっかり水分をとっていたとしても熱中症は起こりえます。熱中症は2つのメカニズムで起こると考えるとわかりやすいでしょう。

熱中症
① 熱のうっ滞による、体温中枢の障害

野外や室内を問わず、温熱環境に身を置くことにより発症します。熱への暴露により体温中枢が障害され、意識障害やけいれん、失神、脱力などを引き起こします。

このタイプは、しっかり塩分や水分を取っていたとしても起こりえますので、根本原因である温熱環境から逃げ涼しい場所に移動します。もちろん、なにより予防が大事!温熱環境を避ける、避けられない場合は帽子をかぶり、涼しい場所でクールダウンをすることが重要です。室内ではクーラーをつけて、換気をよくしましょう。

② 発汗による脱水症状

発汗や息からの不感蒸泄(ふかんじょうせつ:私達が感じることなく気道や皮膚から蒸散する水分)によって身体が脱水状態になり、熱中症症状が引き起こされます。このタイプは、適切な水分補給で多くの場合防ぐことが可能ですが、摂取量以上の発汗があった場合や、適切な電解質(ミネラル)が取れなかった場合には熱中症になってしまいます。とくに、適度な塩分摂取とともに、カリウムを摂取することが重要です*

熱中症でしばしば認めれられる脱力やこむら返りは、カリウムが不足して引き起こされます。普段は高血圧や心臓病で塩分を控えた食事をしている方も、熱中症になりやすい環境に身をおく場合には、しっかりした塩分摂取、水分摂取を心がける必要があります。

熱中症 水分補給

これらのメカニズムがわかると、初期対応で何をすべきかイメージがしやすいのではないでしょうか。しばしばこの2つのタイプが合併して熱中症になることもありますが、どちらのタイプがメインなのかが分かればより適切な初期対応ができるというものです。

*腎機能障害のある患者さんは、担当医へ相談のうえ摂取してください。
(2018.6)